2005/07/26●公明新聞より
拡大アスベスト禍 救済措置を万全に
相談窓口、診断体制急げ/細田官房長官/政府挙げた取り組み表明
公明が首相あて申し入れ


▲細田官房長官に要望を行う冬柴幹事長(中央右)ら党対策本部のメンバー
 公明党アスベスト対策本部(井上義久本部長=衆院議員)は25日、首相官邸を訪れ、小泉純一郎首相あてのアスベスト対策についての要望書を、細田博之官房長官に手渡した。これには、冬柴鉄三幹事長(同対策本部顧問)、井上本部長のほか、赤松正雄、福島豊、山名靖英、江田康幸、古屋範子の各衆院議員、福本潤一、松あきら、渡辺孝男、山本香苗、沢雄二、谷合正明の各参院議員が同行した。

 席上、井上本部長は、アスベストによる健康被害について、一連の報道などにより国民の間に不安が広がっていると強調。早急な相談窓口、診断体制整備を訴えた。また、潜伏期間の長さや家族・周辺への被害の拡大を指摘し、「労働災害では、救済しきれない事態が進んでいる」との認識を表明し、立法措置も視野に、政府に万全の救済策を講じるよう求めた上で、(1)首相を本部長とする政府のアスベスト対策本部の設置(2)現行制度下で救済対象とならない事例の労災認定のあり方の早急の検討(3)健康被害の相談および診断・治療体制の整備――など10項目を要請した。

 これに対し、細田官房長官は、課長級から局長級に格上げして開催していた関係省庁会議について、「より高いレベルの対策本部を立ち上げたい」との考えを表明。与党の対策本部と連携を密に、本格的な救済策の検討を進めていく考えを示した。

 要望書は、このほか、徹底した実態調査と情報開示、労働者やその家族への情報提供、アスベスト利用の完全禁止、健康診断体制の整備、被害を受けた家族・周辺住民の救済、退職後の健康管理体制の確立・手帳制度の改善、廃石綿による2次被害対策の合計10項目からなる。

 アスベストは、95年には毒性が強い青石綿、茶石綿の使用が禁止され、昨年(2004年)10月からは白石綿も原則禁止となるなど、規制が強化されてきた。しかし、アスベストの繊維を吸い込んでから、肺がんや中皮腫を起こすまで数十年の期間があるため、被害が表面化してこなかった。今年(2005年)になって、アスベストを原料とする製品工場の従業員や建設作業員らの間で健康被害が相次いで報告され、社会問題化している。

与党プロジェクトチームを設置
政策責任者会議


 自民、公明の与党政策責任者会議が25日、衆院第1議員会館で開かれ、「与党アスベスト対策プロジェクトチーム」(田浦直座長=自民)を設置した。公明党から井上義久政務調査会長(衆院議員)、山口那津男政務調査会長代理、福島豊衆院議員が出席した。

 会合の冒頭、あいさつに立った井上氏は、拡大が懸念されるアスベスト被害について、「労働災害だけでは救済しきれない事態」と強調、新たな立法措置など抜本的な救済策の検討に意欲を示した。

 同プロジェクトチームには、公明党から座長代理として福島氏が就いたほか、田端正広、赤羽一嘉、桝屋敬悟の各衆院議員、山下栄一、松あきら、加藤修一の各参院議員が加わっている。


平成17年7月25日 
 内閣総理大臣
 小泉 純一郎 殿
公明党 アスベスト対策本部 
本部長 井上 義久 
アスベスト対策についての要望

 我が国は1890年代からアスベストの輸入を始めるようになり、高度経済成長の下、輸入量は1960年代、70年代と急速に増大し、74年には輸入量が年間約35万トンのピークに達した。以後年間約30万トン前後で推移した後、90年代から減少傾向にあるものの、04年の輸入量は依然8千トンとなっている。

 アスベストによる健康被害を防ぐための政府による規制は、71年に特定化学物質等障害予防規則を制定。その後、72年のWHO、ILOの専門家会議による発ガン性の指摘があり、75年には建設現場での吹き付け作業を原則禁止、88年には石綿の管理濃度の策定、95年には茶石綿・青石綿並びにその含有製品の製造等の禁止、さらに03年にその他の石綿の含有製品の製造等の禁止が行われてきた。

 しかし本年、株式会社「クボタ」の旧神崎工場の周辺住民及び労働者家族でのアスベストによると思われる中皮腫の死亡者の多発が明らかになり、アスベストを取扱っていた他の事業所でも同様の事態が発生していることから国民の不安は今まで以上に高まっており正確な情報を求める声が強くなっている。また、健康被害を受けながら、労災保険により救済されていない労働者、また家族・周辺住民の被害者から救済を求める声が相次いでいる。

 こうした事態を受け、政府は先般「アスベスト問題に関する関係省庁会議」を設置し、実態把握、相談窓口の設置等取組みを進めているが、国民の安全を確保し、被害者の救済を進めるための包括的な取組みを求め、以下の事項を要望するものである。

  1. アスベスト対策本部の設置について

    現在の「アスベスト問題に関する関係省庁会議」を格上げし、総理大臣を本部長とするアスベスト対策本部を設置し、政府をあげてアスベスト対策を推進すること。

  2. 徹底した実態調査と情報開示について

    (1)過去から現在に至るアスベスト取扱い事業所、労働者の健康被害の発生状況、労災認定状況、家族の健康状況、周辺住民の健康状況等、徹底した調査を行い適切な情報開示を進めること。

    (2)教育施設をはじめとする公共建築物、民間建築物のアスベストの利用状況の徹底した調査を行い、利用者に対して適切な情報開示、ばく露防止のための対策を進めるとともに解体作業に際してその情報が適切に利用できるよう体制整備を進めること。

  3. 労働者及びその家族への情報提供について

    過去から現在にいたるアスベスト取扱い事業所において、取扱い作業に従事した者のアスベストによる健康被害の可能性など、徹底した情報提供を行うよう事業者へ徹底すること。

  4. アスベスト利用の完全禁止について

    代替品の開発を早急に進め、完全な使用禁止を可能な限り早期に実現すること。またアスベスト含有製品についてその表示の適正を図るとともに、利用者に対して適切な情報提供を進めること。
     
  5. 中皮腫等健康被害の相談及び診断・治療体制の整備と研究の推進について

    産業保健推進センター、保健所や労災病院等で健康被害に対して相談できる窓口を整備するとともに、ベメトレキセド(アリムタ)の早期承認など診断治療体制の整備、より鋭敏かつ効果的な診断法や治療法の開発のための研究を進めること。またそのための中皮腫登録制度を創設すること。

  6. 健康診断体制の整備について

    アスベスト取扱い事業所の過去・現在の労働者及びその家族の健康診断を進めるよう事業者に対して徹底するとともに、ばく露が想定される周辺住民等の健康診断に対応できるよう地方自治体の健診事業等の在り方を適切に見直すこと。
     
  7. 労災認定問題について

    アスベストによると想定される肺がん・中皮腫はその潜伏期間がきわめて長期であることをふまえ、現行の制度下で救済の対象とならない事例の労災認定のあり方について検討を行い、対応策について早急に結論を得ること。

  8. 家族・周辺住民で健康被害を受けた者の救済について

    労災で救済されない家族・周辺住民の健康被害に対して、救済する制度の在り方について早急に検討を進め、速やかに救済を実現すること。

  9. 退職後の健康管理体制の確立・健康管理手帳制度の改善について

    退職後の健康管理体制の確立のため、健康管理手帳制度の支給要件の見直しなど適切な対応を速やかに講じること。

  10. 廃石綿の対策について

    廃石綿による二次的な被害を防止するため、現状について調査を進めるとともに、適正処理の徹底をはかること。
以上