干ばつや異常な降雨、洪水、海面上昇など、世界各地で起きる気象の異変や環境変化への地球温暖化の影響が懸念されている。その一因である2酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの削減を先進国に義務付ける「京都議定書」が、ようやく2月16日に発効する。最大の排出国である米国が参加せず、途上国には削減義務がないなど課題も多いが、削減へ向け世界的な規模で具体的な一歩を踏み出す意味は大きい。
Q.温暖化の現状は?
A.今後100年間で平均気温が4度上がるとの予測も。議定書で温室効果ガスの削減に取り組む意味は大きい。
近年の異常気象は世界的な広がりを見せ、今年(2005年)に入っても米国やヨーロッパでの大洪水など地球温暖化の影響とされる異常気象が頻発している。
これと符節を合わせるように世界的な平均気温の上昇も観測されている。国内では気象庁が観測を始めた1898年以降、1990年に最も年平均気温が高かった。平均気温が高かった順に年を並べると、上位8年のうち7年が90年以降に集中していた。100年間という長い尺度で見ても、日本で約1度、世界で0.6度、平均気温が上がっている。
東京大学などのグループが昨年(2004年)、世界最大規模のスーパーコンピューターで調べた将来の気候予測は衝撃的だ。70年以降の平均気温の急上昇は太陽活動や火山の噴火などでは説明できずCO2の増加など人的な要因が強く疑われた。
さらに、現在のような経済重視の政策が続いた場合、地球の平均気温は今後100年間で4度、環境を重視した場合でも3度上がり、2100年には日本国内の真夏日が100日を超えると予測している。
「京都議定書」は、1997年の気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3=地球温暖化防止京都会議)で採択。先進各国にCO2など温室効果ガスの具体的な削減目標を課し、日本、米国、欧州連合(EU)には、2012年までに1990年比それぞれ6%、7%、8%の削減を義務付けた。
議定書には目標削減方法を柔軟に選べる「京都メカニズム」が盛り込まれ、削減目標達成の難しい国が削減に余裕のある国から排出権を買う「排出量取引」の仕組みなども盛り込まれている。
Q.日本の取組みは?
A.削減目標の達成はかなり大変。企業の努力、「クリーン開発メカニズム」「共同実施」などの手法を総動員。
京都議定書で日本は、1990年比マイナス6%という温室効果ガスの削減目標を負った。見直し作業が進められている「地球温暖化対策推進大綱」が議定書発効とともに日本の「目標達成計画」になる。ただ現実的に目標達成は「大変に厳しい」(小泉純一郎首相)状況で、追加的な対策が必要との指摘もある。
加えて、環境省、経済産業省を中心に取り組みの足並みが必ずしもそろっていない。環境省は、現行の対策のままでは2010年度の温室効果ガス排出量が1990年比では逆に6.4%増え、目標を達成するには実質12.4%の削減が必要になると試算、経済産業省は11%で済むとしている。
排出量削減の手法でも違いがあり、環境省は、温室効果ガス排出量全体の約8割を占めるとされる企業の取り組みに重点を置く。工場などからの排出に一定の制限を加える代わりに企業間の排出量取引を認めたり、「環境税」創設を対策の柱に据える構え。来年度予算政府案に、そのための「排出量取引制度」創設の事業費が盛り込まれた。
これに対し経済産業省は、強制的な措置は企業の国際競争力を奪い産業の停滞につながるとし、省エネルギー機器の推進、技術開発で達成すべきだと主張している。
ほかに、先進国が途上国で対策を行い、削減できた量を得られる「クリーン開発メカニズム」や、先進国が共同で事業を行い削減できた量を投資した国の削減分に参入できる「共同実施」などで、目標達成を図る。
Q.世界の動きは?
A.最も積極的な欧州連合。米国は議定書に参加せず独自の努力。義務を負わない中国は成長優先の姿勢を崩さず。
先進諸国の中で温暖化対策に最も積極的なのが欧州連合(EU)。京都議定書の策定を後押しし、議定書発効のカギを握ったロシアにも強く批准を働きかけてきた。
EUでは、今年(2005年)1月1日から、新規加盟の10カ国を加えた25カ国で「排出量取引市場」がスタート。電力、鉄鋼、セメントなど、域内排出量の半分近くを占めるエネルギー集約型のプラント約1万2000カ所に、排出量削減義務を課した。
域内の各国政府も、国内対象施設に排出上限を定める作業を進めている。排出量が上限を超える施設は余裕のある施設から排出量を買う仕組みで、企業の削減努力で地域全体の排出量を減らすシナリオを描いている。
一方、京都議定書発効のカギを握ったロシアにとって、議定書は環境問題というより「政治・外交カード」の意味合いが強かった。批准の方針は早くから固めていたとされるものの、プーチン政権は世界貿易機関(WTO)への加盟を有利に進めるために議定書批准を最大限に利用。昨年(2004年)春、ロシアの思惑通りにWTO加盟を認めさせることができたため、批准に踏み切ったとされる。
実際の温室効果ガス排出削減はロシアにとって緊急の課題ではない。ロシアでは1990年代からの景気後退と省エネの推進で、CO2の排出量は既に90年に比べ、2003年には72%にまで減っている。国内で目立った対策の動きもなく、逆に発効を機にロシアが対策に本腰を入れれば削減効果は大きく増すという指摘もある。
京都議定書への不参加方針に「変わりはない」とする米国は、一貫して「議定書の目標を達成しようとすれば米経済は失速し約500万人の失業者を生む」と主張する。
ただ温暖化対策に取り組んでいないわけではなく、水素燃料や燃料電池などの新技術の開発で、経済規模を落とさずに温室効果ガスの排出を12年までに18%削減することを目指している。
このほか米国に次ぐ世界第2位の排出国でありながら削減義務を負わない中国は、途上国である立場を前面に、成長優先の立場を崩していない。 |